[ オピニオン ]
(2018/12/14 05:00)
外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法(入管法)が臨時国会で成立した。しかし、細部の詰めはこれからで、解決すべき課題は山積だ。2019年4月からの導入に向け、国民の不安を解消するために政府の綿密な制度設計と丁寧な説明が必要だ。
改正入管法は、新たな在留資格として「特定技能1号」と「同2号」を創設し、単純労働も含む外国人労働者を受け入れることなどが柱だ。1号資格の在留は最長5年で、家族の帯同は認めない。一方、高い技能が求められる2号資格は家族の帯同を認め、永住も容認する。
政府が示す受け入れ見込み数は最大約34万人。現在、日本で働く外国人は約128万人で、新制度導入により、3割程度増える。初年度の19年度は最大4万7000人を想定している。
政府は当面、1号資格で深刻な人手不足に陥っている農業や漁業、造船・電機など各種製造業、自動車整備、介護・サービス業など14業種を対象とする。介護業が5万―6万人と最も多く、次いで外食業が4万1000―5万3000人、建設業が3万―4万人を見込む。
在留資格を担う「出入国管理庁」は法務省入国管理局が母体となる。財界からは「法務省単独で判断できる訳がない。派遣会社だけが潤う制度」という声もあがる。厚生労働省や国土交通省、農林水産省などのほか、受け入れる市区町村との連携が不可欠となろう。
課題の一つは外国人技能実習制度との関係。技能実習生は約25万8000人で、事実上の労働力となっている外国人技能実習生の約7割が最低賃金を下回っている。政府は1号資格の約45%を技能実習生からの移行を見込んでいるが、まず、技能実習生の実態を示すのが筋だ。
実際の受け入れには制度設計の課題も多い。欧州は短期間で急増したことが社会の分断を生んだという先例がある。毎年どの程度の人数を受け入れるか第三者機関のチェックを踏まえて示すべきだ。そのうえで審査を厳格化して、受け入れペースを制御する必要がある。
(2018/12/14 05:00)