[ オピニオン ]
(2018/12/17 05:00)
消費増税への対策や自動車減税ばかりが話題となったが、年金や贈与の見直しなど「変革の予告」にも注目すべきだ。
2019年度の与党の税制改正大綱は、10月に予定する消費税率の引き上げによる景気のガケを、どう乗り切るかが最大のテーマだった。自動車業界が強く要望した恒久減税が実現し、また住宅ローン控除の拡充など新たな仕組みを導入したことは一定に評価できる。
産業界全般として要望した研究開発減税の拡充や、中小企業に続いて個人事業者にも生前贈与を含む事業承継制度を認めたことも、該当する事業者にとっては恩恵となろう。
いずれも大型減税ではなく、財源を抑制する形で細かな対策を積み上げた。結果として税制は複雑化し、「簡素で分かりやすい」という本来のあり方からは遠ざかった。
一方で地方税は大きく見直され、東京の法人事業税を大規模に他の自治体に移転する新制度導入を明記した。新たな負担はなく、あくまで「税源の偏在」の是正だと説明されれば、なんとなく納得してしまう。しかし、これが東京の都市競争力の低下につながるようだと日本の産業社会の基盤を揺るがす恐れがある。先行きを慎重にみていく必要があろう。
個人課税についても「新たな議論のキックオフ」(財務省)があった。年金や税制など、これまでバラバラに整備してきた税制を包括的に見直すとしている。特に年金税制の見直しは企業年金や個人年金の控除のあり方に直結し、企業の福利厚生を変える可能性がある。
また教育資金や子育て資金を祖父母世代が支援する役割を果たしている贈与税の特例にも今後、メスを入れるという。産業界は直結しないものの、従業員の「生き方・働き方」の問題に関係しよう。
「税は国家なり」という。この数年の税制論議の中には、従来の社会構造を土台から変えるテーマが少なくない。個々の増減税だけでなく、こうした国のビジョンについても政府はしっかり説明してほしい。
(2018/12/17 05:00)
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