[ オピニオン ]
(2019/1/23 05:00)
製鉄事業で出る二酸化炭素(CO2)の量を、2100年までに世界全体でゼロにする長期目標を、日本鉄鋼連盟が打ち出した。従来の低炭素化技術を超越した革新的な技術の開発に挑戦し、その成果を海外にも移転させていく構想だ。地球環境に優しい製鉄技術を世界に先駆けて実用化し、日本の基幹産業が持つ先進性を、世界に示してもらいたい。
地球温暖化防止のための国際的な枠組みを定めた「パリ協定」では、21世紀後半の温室効果ガス排出ゼロを目標に掲げている。鉄連の目標もこれに沿うものだが、CO2の排出量が日本の産業部門全体の4割にも上る鉄鋼業界にとって、生やさしいことではない。特に高炉を用いる製鉄法では、原料の鉄鉱石から酸素を取り除くための還元剤として、石炭由来のコークスが必要になり、CO2の発生は避けられない。従来にない革新的な技術の導入が不可欠となる。
業界では石炭を蒸し焼きにしてコークスにする際に出る排ガスから水素を取り出し、還元剤として使うことでコークスの量を抑える技術の開発が進んでいる。だが、これだけでは足りないため、高炉も使わない新しい水素還元製鉄法や、CO2の回収・貯留といった次世代技術の開発に挑むという。一日も早い実現を期待する。
従来の発想とかけ離れたところに、有望なシーズが眠っている可能性もある。大学などの基礎的な研究も充実させるべきだろう。モノづくりを支える基幹産業の将来にかかわる課題だけに、一歩ずつでも着実に研究を進めることが重要だ。
新興国の国民の間でも、環境意識が高まりつつある。中国では特に顕著だ。環境への配慮は海外事業に取り組む上で、従来にも増して重要な経営課題になる。これは環境に優しいモノづくりが、国際競争力の源泉となり得ることを意味する。
鉄鋼業界の国際競争は、激しさを増している。地球環境の持続可能性が高まる先駆的な技術創出は鉄鋼メーカーにとって、厳しい事業環境下で持続的な成長を遂げるためのバネになる。
(2019/1/23 05:00)
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