[ オピニオン ]
(2019/2/15 05:00)
「天災は忘れた頃にやってくる」との言葉を残したのは、物理学者で随筆家の寺田寅彦とされる。もっとも昨今は忘れる暇もないほど立て続けに自然災害に見舞われている。
防災・減災が引き続き大きな課題となる中、本社が事務局を務める日本防災産業会議が防災科学技術研究所と連携の覚書をこのほど締結した。防災科研が主に政府・自治体に公開する災害情報を民間でも使えるようにする。逆に民間の持つ災害情報を防災科研に提供し、国土全体の災害対応力の向上を目指す。
これにより、自社仕様にカスタマイズした災害情報統合システムを構築―というのが民間側の利用イメージだ。例えば、自社拠点および協力会社周辺の道路情報や浸水・給水状況などを一画面のマップ上でまとめて確かめることができ、万一の際の災害対応支援などに役立てられる。
先の寺田寅彦は地球物理学から音響学、X線回折、さらに金平糖の角の研究など多彩な分野で成果を残しただけでなく、文学にも秀でた「知の巨人」だった。
産業や学問領域が細分化される現代だからこそ、今回の連携のようなさまざまな主体による知の共有が、災害多発国ならではの「防災イノベーション」につながることを期待したい。
(2019/2/15 05:00)