変化する「CES」と「CEATEC」、総合展示会に見る共通点と相違点【PR】

(2019/2/19 21:00)

 世界最大の家電技術見本市である「CES 2019」が、現地時間の1月8日から11日まで、米ネバダ州ラスベガスで開催された。全世界から4400社以上の企業が出展。会期中には18万人以上が来場し、AIやIoT、5G、8Kなどの最新技術に注目が集まった。ここ数年拡大基調にあるCESだが、今年もその勢いを感じさせる展示内容だった。

 日本、韓国、中国の電機メーカーからは、8Kテレビの展示が相次ぐ一方、AIを活用した家電製品の展示が目白押しだった。さらに、昨年に続きメーン会場の屋外に大きなブースを構えた米グーグルは、グーグルコネクトを発表。家電メーカーが、音声AIの機能を自社製品に組み込みやすくした。

 この機能をすでに提供している米アマゾンは、今年は初めて公式ブースで出展。家電各社のブースでも、音声AIを活用したデモストレーションが相次いでおり、CES 2019の主役の一角を担っていた点は見逃せない。今後は、各社独自のAIとの連携にも注目される。

 また、自動車メーカー各社は、自動運転に向けた最新技術を展示。電子部品や半導体メーカーも、車載技術の展示を通じて、コネクテッドカーが実現する新たな未来を示してみせた。

スタートアップに勢い

  • CESで日本メーカーも8Kなどで高い技術力を見せた

 毎年、多くの来場者が訪れるのが、全世界のスタートアップ企業が出展する「ユーリカパーク」だ。ユニークなアイデアを、最先端技術によって具現化した製品やサービスの展示が行われ、ビジネスマッチングの場として、今年も多くの来場者の関心を集めていた。

 日本からは、経済産業省が推進するスタートアップ企業育成支援プログラム「J-Startup」に参加している6社をはじめ、22社のスタートアップ企業が共同出展。終日、多くの来場者で賑わっていた。

 CES 2019では、経済産業省の世耕弘成大臣が現職大臣としては初めて視察。「日本のスタートアップ企業の参加は増加しており、来場者に対して、『日本も来たな!』という印象を持ってもらえたのではないか」と語った。

 世耕大臣は2018年10月に、幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2018」も視察しており、「日本のCEATECも、CESに負けないように充実させていかなくはならないことを痛感した」とも語る。

 今回のCES 2019では、経済産業省の関係者をはじめ、CEATECの関係者も視察に訪れていた。実は、CES 2019では、メディア関係者に最新技術や製品などを紹介する「ShowStoppers@CES」に、CEATECとして、初めてパビリオンを設置。CEATEC AWARD受賞企業とともに、CEATECの存在を、世界に向けて発信してみせた。

 CEATEC JAPAN 実施協議会の鹿野清エグゼクティブプロデューサーは、「CES 2019への出展を通じて、世界に向けて、CEATECの存在感を訴求し、海外からの出展者、来場者の増加につなげたい」と話す。 

「世界3大」…

 CEATECは、年初に米国で開催されるCES、秋にドイツで開催される「IFA」と並んで、電機産業における世界3大イベントと称されてきたが、展示規模や来場者数、産業への影響力という観点で、2つの展示会に大きく水を開けられてきた。

 日本の電機メーカーの低迷に伴い、出展者数および来場者数が減少。さらに、国際展示会という色彩が薄く、日本の企業を中心とした展示会の域を出なかったため、縮小を余儀なくされてきた。

 だが、2016年に、従来の「最先端IT・エレクトロニクス総合展」から「CPS/IoT Exhibition」へと大きく舵を切って以降、来場者は右肩あがりに増加しており、2018年10月に開催されたCEATEC JAPAN 2018では、15万6000人が来場。1日あたりの来場者数は、過去5番目の水準にまで盛り返してきた。

 特筆されるのが過去3年間に渡って、毎年、出展者の約5割が初出展の企業であり、来場者の約3分の1が初めての来場者であるということだ。それが3年間繰り返されており、その結果、4年前のCEATECとは、まったく異なる内容になっているのだ。

出展の狙いは「共創」

  • ローソンのCEATECブース

 CEATEC JAPAN 2018には、電機大手や電子部品大手などに混じって、過去のCEATECから見れば、「異業種」といえる企業が出展。金融、観光、スマートライフ、エンターテインメント、農業、建設・土木、都市インフラ、スマートシティ、医療・ヘルスケア、物流・流通の10の産業界から、20社のフロントランナー企業が出展した。

 これらの企業の出展の狙いは、「共創」にある。出展者や来場者が、お互いの技術を組み合わせて、デジタルトランスフォーメーションを図ったり、新たなビジネスの創出に取り組むきっかけを作ろうとしているからだ。

 CEATEC JAPAN 2018で基調講演を行ったローソンの竹増貞信社長は、「デジタルと共存し、デジタルを味方につけて、社会課題解決に適した店づくりにチャレンジしたい。そのために、多くの方々と手を組みたい」と、満員の聴講者に呼びかけた。展示会場では、近未来のコンビニを誕生させて、来場者の高い関心を集め、目玉展示のひとつになったのは記憶に新しい。

「共創」の成果が生まれる

 かつては、各社から登場した新たな製品や技術を見るための展示会だったが、いまは、ビジネスマッチングによる共創の場に変貌しているというわけだ。実際、CEATECをきっかけにした「共創」の成果は、数多く生まれているようだ。

 デジタルトランスフォーメーションの時代を迎え、競合相手が業界内だけでなく、業界外からも生まれ、新たなテクノロジーが競争環境を変えることはいまや共通認識だ。米Uberの登場によって、タクシー業界が激震に見舞われた米国の事例は、その最たるものだ。こうした危機感を持った企業にとって、CEATECは有効な展示会になりつつある。

 そして、今回のCES 2019で、CEATEC関係者が奔走したように、これまで弱かった海外企業の出展に関しても、積極的な活動を開始している。

 CEATEC JAPAN 2018では、ドイツ・ボッシュや米テスラなどの海外企業大手の出展に加えて、「Co-Creation Park」を初めて設置。米国や英国、フランス、インドなど、各国のスタートアップや先端企業が出展。海外からの出展者は増加傾向にある。

 Co-Creation Parkは、CESのユーリカパーク、IFAのIFA NEXTを意識したエリアであり、「共創の場」を掲げるCEATECにとって、今年はさらに重要な展示エリアになりそうだ。

 CEATECは、2000年に、「エレクトロニクスショー」と「COM JAPAN」の2つの展示会を統合して開催したのが始まりであり、今年は、ちょうど20回目の節目を迎える。

 共創を切り口に、未来を見据えたコンセプトや新しいビジネスモデルを発信する「CPS/IoTの総合展」として、CESとも、IFAとも異なる、新たな道筋を歩み出したCEATECの今年の動きがいまから注目される。

(文=ジャーナリスト・大河原克行)

(2019/2/19 21:00)

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