[ オピニオン ]
(2019/5/3 05:00)
わが国の景気が足踏みを続ける最大の原因とされるのは、中国経済の減速だ。米中貿易摩擦の高まりに伴って対米輸出が減少、設備投資も落ち込んだことで中国経済の成長が鈍化して、日本の対中輸出を冷え込ませた。今後の日本経済および世界経済のカギを握る中国経済を展望してみる。
このほど発表された2019年1―3月期における中国の実質国内総生産(GDP)は前期比6・4%増と横ばいだった。米中の間の関税引き上げ合戦が引き金となって輸出入にブレーキがかかり、GDPは18年4―6月期以来、3四半期連続で減少してきたが、4四半期ぶりで減速に歯止めがかかり、底入れの兆しがみえてきた。
米中貿易摩擦の長期化に危機感を抱いた中国政府が昨秋から大規模な所得減税などの景気対策を打ち出し、それがここへきて効果を見せ始めた。さらにインフラ投資も増加してきたことが経済底入れの要因のようだ。
製造業の生産活動は依然としてブレーキがかかったままで、対米輸出入は冷え込んでいる。しかし、中国政府は今年に入って企業減税のほか自動車・家電への購入補助金などの景気刺激策を相次いで発表、景気押し上げに躍起になっている。
また、昨年一気に過熱した米中間の関税引き上げ合戦は、このところ沈静化の方向にあり、両国とも譲歩する姿勢を示している。このため中国の景気が4―6月期に持ち直す可能性は小さくない。
さらに3月に開かれた全人代(全国人民代表大会)では今年の成長目標を前年比6・0―6・5%とした。同時に、景気を刺激し内需喚起を図る経済運営方針が示されて、企業と個人のマインドが改善されるものとみられ、中国経済の先行きを楽観視するエコノミストは多い。
とはいえ、個人消費は力強さを欠き、新車販売台数は昨年夏から前年実績を下回っている。加えて過剰設備、過剰債務という構造問題は変わっていないことから、高度成長に戻り、世界経済をけん引することは期待しにくいと言わざるを得ない。
(2019/5/3 05:00)