[ オピニオン ]
(2019/5/2 05:00)
2000年に389万1000人だった農業就業人口は18年に175万3000人に減少した。平均年齢も00年の61・1歳から18年の66・8歳と高齢化が進んでいる。また、カロリーベースの食料自給率はこのところ40%を下回る水準で推移しており、今後、わが国農業の活性化が求められる。
一方で、参入障壁の引き下げもあり、企業の農業参入が増えてきた。農林水産省の調査によると、新規雇用就農者は08年の6960人が17年には7960人に、新規参入者も同860人が同2710人に増えた。こうした中で、農業活性化の新たな取り組みが始まりつつある。
その一つが「農業データ連携基盤(WAGRI)」。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、農業ICT(情報通信技術)の課題を解決し、農業者が経験と勘だけに頼るのではなく、データを使って生産性向上や経営改善に挑戦できる環境を生み出すため、データ連携・共有・提供機能を有するプラットフォームを構築。4月から本格運用を始めた。
もう一つはわが国最大の農業研究機関の農研機構と工学系大学トップの東京工業大学が3月下旬に連携協定を結んだ。連携体制の構築によって、農業・食品産業分野での「ソサエティ5・0」の早期実現、農業・食品産業の持続的発展、生命・環境分野のビッグデータ利活用による産業振興などを目指す。
想定される研究事例としては、微生物燃料電池を電源としたサステナブル環境モニタリング装置の開発、低価格・高寿命・軽量な家畜センシングデバイスの開発、腸管免疫に関する乳酸菌の寄与および健康寿命延伸に関する研究などのテーマが想定されているという。
エネルギーや天然資源の大半を海外に依存するわが国にとって、国民の生存に欠かせない食までも外国頼りというわけにはいかない。農家の経験と勘は重要だが、それだけに頼ることなく、情報通信によるさまざまなデータや工学の技術を活用して生産性向上や経営改善に取り組むことが重要であろう。
(2019/5/2 05:00)
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