[ オピニオン ]
(2019/5/3 05:00)
がん研究振興財団の予測によると、2018年の男性の部位別がん罹患(りかん)率は胃、大腸、肺の15%に次いで前立腺が14%。四つで全体の59%を占める。
がん細胞は多くの糖分を取り込むため、ブドウ糖と陽電子放出核種を合成した薬剤(FDG)を注射し、陽電子放射断層撮影(PET)を使いがんを見つけることができる。だが、前立腺がんなどの診断に不向きとされる。
前立腺に接する膀胱(ぼうこう)にブドウ糖が集まり、がん細胞なのか、薬剤のせいなのかを判断しにくい。このため、患部に針を刺し細胞を取り出す検査をするが、痛みを伴い、患部を外す懸念もある。
北海道大学とPET用医薬品院内製造システムのトップメーカーの住友重機械工業、核医学医療事業のアトックス(東京都港区)がPETで前立腺がんを正確に診断する薬剤製造装置の共同開発に乗り出す。22年度に治験を始める。
具体的には、前立腺がん表面に現れる前立腺特異的膜抗原(PSMA)というたんぱく質に結合する薬剤(68Ga―PSMA)を製造する。これを使いPET診断すると前立腺がんを正確に検知する。将来、前立腺がんが首位になるとの予測もある。がん診断分野でイノベーションを起こす起爆剤となってほしい。
(2019/5/3 05:00)