[ オピニオン ]
(2019/6/4 05:00)
2018年にノーベル生理学医学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授と、小野薬品工業との関係に溝が深まる。両者で新たながん免疫治療の道を切り開いた新薬「オプジーボ」は14年に発売され日本での産学連携成功事例とされてきた。ただ本庶氏が小野薬に対し、特許をめぐる契約で対価が低いと批判を強める。小野薬もリスクをとり新薬に挑戦しており、06年に契約した対価の大幅引き上げに難色を示す。同問題では公正な産学連携の在り方も問われ、関係者は議論を深めてほしい。
本庶氏は4月に異例の会見を開き、当時の契約内容の一部を公開し、小野薬の契約説明が不十分と強調した。当時の京大側の知的財産関連体制は未整備で、本庶氏自身も知財の知識がなく、不当な契約を結ばされたとの言い分だ。本庶氏は自ら設立した若手研究者を支援する基金へ、小野薬にオプジーボで得た利益からの大型寄付を訴える。一方、小野薬は5月22日に出したコメントで「今後も契約に基づく対価を支払う」とし対価引き上げに応じず、「基礎研究や若手研究者の育成に資する寄付を検討している」と回答した。
小野薬のオプジーボ国内売上高は、発売時の14年度が25億円で16年度に1000億円を超え、直近の18年度も906億円となった。提携する米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)などからのロイヤルティー収入なども得ており、オプジーボで小野薬は成長してきた。
ただメルクなど世界有数の製薬会社もがん免疫治療薬で猛追する。小野薬はオプジーボに加えポストオプジーボも見据えた投資も必要な状況で、本庶氏の800億円超とする対価要求の受け入れに慎重だ。
本庶氏は日本の大学と製薬企業がウィン―ウィンの関係が築けないと、日本発の大事な研究シーズが海外流出すると警告する。国内製薬業界も技術の目利きが難しい生命科学分野の産学連携の在り方を意見表明すべきだ。小野薬が本庶氏との関係修復を図れなければオープンイノベーションを掲げる同社の産学連携に影響を与えかねない。
(2019/6/4 05:00)
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