[ オピニオン ]
(2019/6/7 05:00)
デジタル経済に対応する新たな法人課税方法について、日米欧の協議が本格化している。8日から福岡市で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、デジタル課税が主要テーマとなる見通し。日本は議長国として、各国の利害を調整し、大枠の方針を固められるかどうかが焦点となる。ただ、日本も各国の動きを見極めながら、内々に独自の課税案を、検討しておくことが重要だ。
現在の国際課税の法人税(直接税)ルールは、本社やそれと同等の機能を持つ支店などの恒久的な施設のある場所に所得が発生し、その国が課税権を持つというのが基本的な考え方だ。約1世紀前に国際連盟主導でつくられた。支店など対面型ビジネスを前提とし、物理的な拠点にひも付けた利益に課税する。
しかし、経済のデジタル化が進展し、ネットを通じ顧客と会わず何ら物理的拠点も持たないビジネスができるようになった。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が象徴的な例だ。
現在、OECD(経済協力開発機構)は、データの価値に着目して課税する英国案や、ブランド力などの無形資産に着目して課税する米国案、各国の売上相当額に企業グループの全世界の利益率をあてはめて課税するインドなどの新興国・開発途上国などの3案を基に、検討中だ。英国案はGAFA狙い撃ち要素の濃い内容となっている。米国案は、IoT(モノのインターネット)製造業や自動運転を目指す自動車産業など消費者向け(BツーC)製品事業者も含み、より広い対象が特徴だ。
どの案も利用者がいる国に税収を配分するという点では、主要国の認識は一致している。
日本はどう対応していくべきだろうか。財務省出身で東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「日本も独自案を検討しておくべき」と強調する。基本的には、利用者がいる国に配慮した利益配分のルールづくりに積極的な役割を果たすだけでなく、欧州各国の今後の展開を見極めつつ、消費課税の道も探っておくことが大事だ。
(2019/6/7 05:00)