[ オピニオン ]
(2019/7/1 05:00)
「全国安全週間」が今年も1日に始まる。労働災害は長期的には減少傾向にある。一方、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加した。高年齢労働者の増加や、小売業・飲食店・社会福祉施設など第3次産業従事者の増加が背景にある。特に、「転倒」や「熱中症」、外国人労働者の死傷災害などが増え、一層の対策を講じる必要がある。
厚生労働省によると、18年の労働災害による死亡者数は909人と、17年を69人下回った。18年の休業4日以上の死傷者数は12万7329人と、17年に比べ6869人増えた。
近年の労働災害には、いくつかの特徴が浮かび上がっている。まず、年齢別の死傷者数で60歳以上が3万3246人と、前年に続き最多を更新した。災害全体に占める割合は、60歳以上が26・1%で、他の年代と比べて高くなっている。
事故の型別では、「転倒」と「動作の反動・無理な動作(腰痛)」が大幅に増えてきている。特に転倒は、死傷災害全体の25%を占める。また、18年は熱中症が17年比2倍以上の死傷者を出しており、対策が講じられているものの、増加に歯止めがかかっていない。
また、外国人労働者全体・技能実習生の死傷災害は年々増加の一途をたどる。対策の一つで有効と考えられるのが、習慣や言語の違いなどによる「禁止事項」の行き違いを解消することだ。それには誰が見ても分かる「見せ方」が必要になる。
中央労働災害防止協会などは、外国人労働者など多様な労働者向けに「分かりやすい図示化の手引き」を作成した。今後、基本的な安全確保から作業の進め方から円滑なコミュニケーションの促進まで、多様な労働者が安全・健康に働ける職場づくりにつながるよう、ツールを積極的に活用していくことだ。
安全・安心を確保するための努力に終わりはない。労働者自身が加齢に伴う身体機能の低下を自覚しないまま作業し、転倒などの災害に至るケースが多いのも事実。運動や食事、睡眠などのセルフケアを促す取り組みも一層求められる。
(2019/7/1 05:00)