[ オピニオン ]
(2019/8/21 05:00)
「まいど教授」。大阪府東大阪市の貸工場研究を原点に、約40年にわたり全国の中小企業を訪問調査してきた関西大学名誉教授の大西正曹さんの“愛称”だ。本人の名刺にも似顔絵と併せて表記する。
机上で考えて理論付けするより、まず「まいど」と気軽に調査対象企業に飛び込む。訪問を繰り返す熱心さが経営者に伝わり、胸襟を開いた話ができる関係を構築していく。
最近の著作のタイトルは『中小企業再生の道 精選版』(晃洋書房刊)。副題には『歩いて見て聴いた40年 まいど教授の探訪記』とある。
中小企業研究を振り返った調査報告や講演会の記録などで構成した。事例も盛りだくさんだが、人工知能(AI)やバイオといった先端技術の企業よりも、部品・加工業などを中心に、課題を抱えつつ困難を乗り越えてきた企業をメーンに紹介する。
いま大西さんが注視しているのは社会インフラのメンテナンス産業だ。例えば橋は全国に約70万カ所あるそうだが、その老朽化は課題。「各地のインフラ維持に、地域の中小企業が大学や公設試験所などと連携し補修施工に関われないか」と提言する。76歳の今も、「まいど」と中小企業を元気にするネタを現場で探す姿勢に感服する。
(2019/8/21 05:00)