(2019/10/1 05:00)
学校教育の教材における著作権で、新たな補償金制度の議論がなされている。権利者側と使用者側の組織同士の交渉となっているが、個々人も関心を持ち、誰もが納得のいく制度に仕上げることが重要だ。
論文や小説、写真や音楽など他人の著作物を、印刷物としてコピーしたりインターネットで利用したりする場合は、個別に著作権者の許諾を得る必要がある。しかし、非営利の教育機関での授業は著作権フリーとなっている。これにより現場は自由に、教室で印刷物を配布したり資料を投影したりできた。
だが、情報通信技術(ICT)で公衆送信して活用する場合は状況が異なる。インターネットを介してあっという間に著作物が拡散し、閉じた教室での著作権と同じ扱いはできない。
このため小中高大の学校教育では「生徒・学生1人当たり年間いくら」という形で、著作権の管理団体に補償金を払う制度が動きだす。著作権法が2018年5月に改正され、21年5月までに施行される。各学校の設置者が、文化庁長官指定の一般社団法人「授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS=サートラス)に補償金を支払い、同協会が著作権者に資金配分する仕組みだ。
現在、対象となる授業方式や金額について議論されているが、各著作権協会など権利者側と国立大学協会や全国都道府県教育委員会連合会など利用者側で意見の隔たりが大きいと聞く。補償金は個人が支払うものではないが、個人も議論に無関心でいてはいけない。というのは歌や楽曲の著作権保護における混乱が前例としてあるためだ。作曲者などに代わり権利を主張する日本音楽著作権協会(JASRAC)と、民間の音楽教室やセミプロのミュージシャンらの激しい対立を、残念に思った音楽ファンは少なくない。
人生100年時代の学びにも関わるだけに、補償金制度の整備がスムーズに進むことを願わずにはいられない。関係機関には情報をオープンにし、誰もが納得できる仕組みの確立に努力してもらいたい。
(2019/10/1 05:00)
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