(2019/11/7 05:00)
研究と社会の関わりにおいて、人文学・社会科学系の研究に期待が高まっている。人工知能(AI)が普及する上で、倫理学や法学の視点も必要になるなど、新たな変革に直面しているためだ。2021年度からの第6期科学技術基本計画に向けて、この議論を深めてほしい。
社会の課題解決はこれまで、自然科学系の研究成果に基づく科学技術が力を発揮してきた。しかし例えば、AIによる自動運転で生じる事故の予防や処理を考えると、それだけでは十分でない。倫理学、哲学、心理学、法学など、人文・社会科学系の知や解釈も必要になる。
しかし自然科学と人文・社会科学の間には一般社会が思う以上にギャップがある。自然科学系は、物質的な豊かさをよしとするなど一元的な傾向があり、客観性や論理の正しさを重視する。研究者は共同研究などで仲間を増やし、産業界など社会に成果をアピールすることにも積極的だ。人文学系は多元的で、現世代の問題点を指摘したり、社会に別の選択肢を提示したりすることができる。主観的な見方や、価値や意味の多様性を大事にする。研究者は個人で行動することも多く、熟考に重きを置く。そして社会科学系はこれらの中間といえる。
こういった特性の違いはソサエティー5・0の議論の場などでも、しばしば浮かび上がる。人文・社会科学系の研究者の力を引き出すには、両系の連携の努力を辛抱強く重ねる必要がある。
政府も科学全体を支援する意識が必要だ。現在の科学技術基本計画は「人文学・社会科学の研究は自然科学と融合する場合のみ」を支援対象としている。しかし津波記録の古文書の歴史学が、現代の災害研究に影響を与える例もある。それだけに次期計画においては、「対象を人文学・社会科学系全般にも広げよう」という声に、もっと耳を傾けたい。
次期計画は残り1年程度で固めることになっている。分断しがちだった両系の連携を進めて、社会がその果実を得るべく、議論を深めてほしい。
(2019/11/7 05:00)
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