(2020/3/2 05:00)
旧国鉄の「スト権スト」を経験された読者諸兄姉は、いまや少数派だろう。1975年11月から12月に首都圏を中心に1週間以上も列車が運休し、職場や学校は臨時休業を余儀なくされた▼新型コロナウイルスの感染拡大防止策として安倍晋三首相が指示した小・中・高等学校の臨時休校。同時に大規模イベントには延期・中止を呼びかけ、特定の場所に人が集まることへの警戒を求めた▼テーマパークの臨時休園やスポーツの無観客試合、確定申告の期限延期など、影響範囲は広い。有識者会議の「これから1、2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との見解から、首相が下した判断は唐突で成果も不確実だ▼経済の繁栄は平和と安定から生まれる。年度末を控えての突然の休業は、多くの混乱とともに景気の悪化を招こう。その規模は東日本大震災後の計画停電に匹敵する恐れもある▼かつてのスト権ストは、鉄道から自動車への物流シフト加速や強行ストへの社会的反感につながった。今回の新型コロナ対策も、テレワーキングや電子申告が一気に普及するきっかけになるかもしれない。混乱を乗り越えた先の社会変革を思いつつ、患者の方の快癒と流行の早期収束を祈る。
(2020/3/2 05:00)