(2020/5/6 05:00)
複数の射出成形ラインの省エネルギー化を支援する技術が産学連携で開発された。システム全体でピーク時の消費電力を抑える最適な生産計画を立てられコスト削減に活用できる。
工場の生産設備の中でもプラスチック製品を作る射出成形ラインは電力使用量が多い。このため東京理科大学の日比野浩典准教授とトヨタ紡織は、射出成形機を含む複数ラインの消費電力削減をテーマに共同研究を行い、実用化にめどをつけた。
射出成形ラインは粒状の樹脂材料を乾かして加熱シリンダーに入れ、ヒーターで水あめ状に溶かす。さらに高圧をかけて金型に流し込み、金型を閉じて成形し、冷却により固めてからロボットで成形品を取り出す。
1サイクルに樹脂の溶融や射出など消費電力の大きな動作が複数存在する。消費電力の変動も工作機械などに比べて複雑なため、複数のラインが稼働するシステム全体では、変化する設備状態と消費電力の関係を再現するのはさらに難しい。
複数のラインが稼働するトヨタ紡織でも、システム全体の電力使用量削減には、ピーク時の消費電力の抑制が求められていた。だが個々の機械のプロセスを見直すだけではピーク発生時や、その原因を把握するのは難しく、ラインやシステム全体の省エネ化には限界があった。
共同研究では、ラインの各工程に要する時間や消費電力をコンピューターに取り込み、システム全体で消費電力のピークが重ならない「仮想工場」をシミュレーションした。成形工場は仮想工場を手本に、作業が一時に集中しないシステムの設計・運用や、電力を無駄遣いしている工程の把握が容易になる。
大手企業の工場などでは省エネルギー法で年平均1%以上のエネルギー消費効率(エネルギー消費原単位)の改善が求められている。成形工場はこれまで原単位改善のため分母にあたる生産量の増加に注力し、分子の消費電力は個々の機械の省エネ化が主体だった。システム全体の省エネ化が可能になったことで、原単位改善に新たな道が開ける期待が持てそうだ。
(2020/5/6 05:00)
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