(2020/11/16 05:00)
世界のモノづくりの潮流はICT活用へ急速にシフトしている。日本勢が世界をリードしてきた工作機械においても、デジタルツイン(デジタルとリアルの融合)の推進は、国内産業競争力の底上げにつながる。16日に開幕する「JIMTOF2020オンライン」では、高度な加工技術とICTを組み合わせた次世代のモノづくりやサービスの提案に期待したい。
日本の産業競争力は、長らくリアルの世界におけるモノづくりの強さに支えられてきた。特に製造現場にはさまざまな強さの要因がある。熟練者の技能や高度な加工技術を持つ工作機械、現場の不具合を取り除く改善の取り組みなどは日本企業の得意分野とされてきた。中でも表面処理を不要とする研削や複数工程を集約できる複合加工、最近では金属積層加工など機械の技術力向上の成果は多い。
一方で、ハード偏重という弊害を生んだことは否定できない。顧客の要望が多様化する中で、ハードの進化だけでは対応しきれなくなっている。
大手や中堅の工作機械メーカーは、デジタルツインによる機械設計、IoT(モノのインターネット)を活用した予知保全や効率的な工場稼働の提案、人工知能(AI)による加工条件の最適化、加工ナビゲーションのアプリケーション(応用ソフト)、オンライン経由の保守や据え付けなど、さまざまなICT活用を実用化し始めている。こうした動きを業界全体に広げ、中小製造業にも使いやすい環境を整えることが産業界の底上げに重要だ。
日本工作機械工業会(日工会)がまとめた10月の工作機械受注実績(速報値)は前年同月比で25カ月連続の減少ではあるものの、2カ月連続で800億円台を維持した。19年までの高水準には及ばないが、中国・米国市場の需要回復をうまく日本メーカーがとらえた結果といえる。
この流れを持続させるためにも、ICT活用による機械の進化は不可欠だ。JIMTOFオンラインは、機械メーカーやユーザーの意識変革の好機となるはずだ。
(2020/11/16 05:00)