社説/菅政権100日 民意を失えば果断も生かせず

(2020/12/25 05:00)

国政の責任者として、国民の期待にこたえることの難しさを痛感しているのではないか。

菅義偉氏が第99代の首相に就任して25日で100日。わずかな期間で政権への評価は一変した。新型コロナウイルス感染症対策が後手に回り、与党からも不満が漏れ出している。

脱炭素社会の実現やデジタル化をはじめ、個々の政策に対する産業界の評価は高い。しかし首相のリーダーシップには不安を覚える経営者が増えているのではないか。

首相としては不本意だろう。デジタル庁創設などの政権公約は準備が進んでいる段階。コロナ禍は予測不能な側面があり、国民の多くが批判した「GoToトラベル」も、感染拡大の元凶という科学的証拠はない。

コロナに対する知見が乏しかった4月の緊急事態宣言は、ブレーキを踏みすぎて経済を必要以上に傷つけた。その反省に立ち、慎重に状況を見ながら対処するというのが合理主義的な実務家である菅首相の考えに違いない。だが、それが国民に十分に伝わっていない。

歴代の長寿政権には、民意をリードする特徴的な政治手法があった。中曽根康弘氏は日米の強固な同盟関係を基盤とし、小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」という改革アピールで国民的人気を得た。安倍晋三前首相は憲法改正の持論を後回しにして経済最優先を打ち出し、高い支持率を維持した。

菅政権にはこうした魅力が欠けている。得意分野の“攻め”は果断でも、“守り”は意外に脆(もろ)いことを露呈してしまった。さらに就任前から弱点とされた外交でも目立った成果はなく、首脳外交のアピールを得意とした前政権に見劣りする。

首相が切り込もうとしているデジタル化や経済再生は、産業界が期待しながら前政権が打破できなかった岩盤規制そのものだ。政界・官界の抵抗は強い。前政権の官房長官だった菅氏には歯がゆい時もあったろう。首相としての決断が望まれる。

民意を失っては、それも実現しない。まずは国民の支持を取り戻すことに努めるべきだ。

(2020/12/25 05:00)

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