(2021/2/26 05:00)
変化する時代に、新たなビジネス創出を加速させるDXのあり方とは
製造業の先進事例、オープンイノベーションを実現するLumadaの最新動向
モノづくり日本会議は1月27日、モノづくり力徹底強化検討会・第6回勉強会「DX時代のモノづくり&サービス(3)」をオンラインで開催した。デジタルによる社会の変革はコロナ禍で加速し、モノづくり企業だけでなく産業界はDX(デジタル革新)による業務効率化や、新たな価値創造を迫られている。オープンイノベーションで企業間連携を拡大するデジタルソリューション事業を提唱する、日立製作所の矢崎武己アプリケーションクラウドサービス事業部担当本部長の講演を中心に議論を進めた。
デジタルソリューション提唱
日立製作所 アプリケーションクラウドサービス事業部担当本部長 矢崎武己氏
DXで実現したい世界はどのようなものか、また、新しいビジネス創出に向けてDXをどのように進めるのが良いかを話したい。当社は2016年に「Lumada」を発表し、デジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称として展開を進めてきた。20年11月には、オープンイノベーションを実現するパートナー制度「Lumadaアライアンスプログラム」を発表した。モノづくりの現場にとどまらず、例えば物流、保険など業種をまたいで価値を創出し、最大化することがDXでは重要になる。
世界はコロナウイルスへの対応をはじめ、気候変動、経済格差、エネルギー問題などさまざまな社会課題を抱えている。課題解決のためにクローズアップされているのがDXの必要性だ。
わが国では経済発展と社会課題解決を両立する人間中心の社会としてソサエティー5・0を掲げており、コロナ禍以降リモートワークやキャッシュレス決済などのデジタルシフトも急速に進んでいる。20年は非常に困難を伴う年であったと同時に、ソサエティー5・0実現に向けた大きな転機の年となった。これまで実現できていなかった通勤ラッシュや少子化、地方経済の停滞といった社会課題を解決し、人間中心の社会を実現することを、産業界が考えていかなければならない。
そうした中で、お客さまのデータに大きな価値があると考える。Lumadaは、「データに」光を当てて「輝かせる」(イルミネート)ことからの造語で、鉄道やエネルギーといった社会インフラをはじめ多様なパートナーと、デジタルを用いた豊かな社会を目指している。
そのためには、まず潜在する課題の発見・分析が必要だ。課題に対しお客さまとともに業務ノウハウを元に解決の仮説を立てる。さらに、迅速にプロトタイピングを行い、実現可能性を検証した上で、最終的にお客さまにソリューションやサービスを提供して運用する。「パートナーとの協創」「業種・業務のノウハウ」「プラットフォーム製品とテクノロジー」の3本が柱だ。
協創へデータ分析・ノウハウ蓄積
まず協創へのアプローチとして、課題を抽出してアイデアを具体化するフレームワーク「NEXPERIENCE」を体系化している。業種や業務のノウハウは、既に工場や流通、電力、ヘルスケアなど1000件を超えるユースケースが蓄積されている。
重要となるのがオペレーショナルテクノロジー(OT)や、収集したデータを人工知能(AI)を活用して分析するなどのIT、そしてプロダクトのノウハウを取りそろえることだ。これらのノウハウやテクノロジーをLumadaのプラットフォーム上に蓄積する。これが「Lumada Solution Hub」で、さらに推し進めたアライアンスプログラムを発表した。
このプログラムではパートナーとの1対1の関係だけでなく、n対nのエコシステムを構築する。技術やノウハウ、アイデアを相互に活用し、データから新たな価値を創出し、人々のQOL(生活の質)向上に貢献する、といったビジョンを掲げている。
具体的にLumadaを活用して、どうDXを実現していくか。限られた投資体力の中で目標を定め、投資判断するには、本業の価値をいかに高めるかが重要となる。その際にはDXの成熟度に応じた施策が必要で、当社は「マチュリティー・モデル」を提案している。レベル1ではデータを見える化すること、レベル2ではデータをつなげること、と進め、レベル5では最適化、そしてレベル6では共生社会のための要件を定義して新たな価値を生んでいくなど、イノベーションを起こしていく。システム構築に当たっては段階的にレベルを設定し、上げていく。
製造業に関しては、製造現場のデータを収集してモデリングし、工場のデジタルツインを実現する。さらに製造現場のデータを起点として、経営情報までを一元管理し、迅速な意思決定につなげる。さらにレベルが上がっていくと、新たなニーズも生じる。当社のソリューションやコンポーネントだけでなく、パートナーのソリューションなども使い、DXを迅速に強化する。
機械メーカーでの故障影響調査とメンテナンス、修理の事例を挙げる。まず稼働率の状況から装置の故障を検知して状況を確認し、対応策を検討し、遠隔サポートオフィスからAR(拡張現実)などの活用により支援して、メンテナンスを実施する。さらに再発防止策を検討し、最終的には製品設計に反映する。
他業種にまたがり価値最大化
製造現場にとどまらず、調達や、運営保守、さらにサプライチェーン全体をDXでつないでいく。レジリエントなサプライチェーンを実現し、市場までつないだ需要予測に基づく生産や、モノを使うお客さまのQOL向上にまで発展させる。
先進的な取り組みにおいては、協業の輪は製造業やその周辺だけにとどまらない。新たな価値が、私たちが住む街や交通機関、オフィス、自宅などで提供されていく。そのために、さまざまな業種、分野のパートナーと共に、優れたソリューションを提供し、DXを加速する。
(2021/2/26 05:00)