(2021/5/24 05:00)
ワクチン接種が経済回復のカギとなっている。産学官の連携で接種体制を増強させたい。
厚生労働省は21日、米モデルナと英アストラゼネカが申請していた新型コロナウイルスワクチンについて特例承認した。
防衛省が東京都と大阪府で24日に始める大規模接種ではモデルナのワクチンを使用する。自治体接種で使われる米ファイザー製と合わせ、接種規模の拡大がはかれる。アストラゼネカ製はごくまれに血栓が生じた例があり、当面公的接種には用いない。しかし、国内で量産し、冷蔵で長期保存できる特長がある。有効な活用策を考えたい。
ワクチン接種実績は20日時点で約799万回。1日当たりの実績は40万回を超えた。ただ、菅義偉首相は1日100万回の接種を求めており、防衛省による集団接種を加えても達成は難しい。接種場所、接種の実施者の両面から増強が必要だ。
歯科医師による接種が一部の地域で始まった。加藤勝信官房長官は「薬剤師の活用も検討する」と表明している。欧米はより幅広い人員を確保し、接種にあたっている。日本も医師の監督下であれば特例的に実施者を広げる努力をすべきだ。
政府は経団連に企業の産業医による協力を求めた。社員を対象にした集団接種や、近隣住民への接種の担い手を期待する。NTTは「政府から要請が来るのを想定して、社内で検討を始めた」(広報室)など、企業も動きだしている。65歳未満の社員に自治体ルートより早期に接種が可能なら手を挙げる企業も出てくるだろう。公平な接種との兼ね合いはあるが、迅速な接種を最優先に柔軟な対応を検討していくべきだ。
高齢者の接種では、電話やネットを通じた予約で多数のトラブルが生じている。自治体は他の自治体での好事例なども参考に、今後の受け付けのあり方を再検討してもらいたい。
ワクチン接種の進捗(しんちょく)が、経済の回復と密接に関係している。官民が連携して効率的で迅速な接種へ知恵を絞りたい。海外渡航者へのワクチンパスポート発行も早期に実現すべきだ。
(2021/5/24 05:00)