(2021/7/27 05:00)
誰のための、何のための計画なのかを、根底から見つめ直さなければならない。
経済産業省は中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の素案を公表した。2030年の電源構成について、再生可能エネルギーの比率を36―38%(現行計画比14ポイント増)に引き上げ、原子力発電は再稼働を前提に現行計画と同じ20―22%とする一方で、19年時点で76%を依存し圧倒的主力電源である火力発電は41%と大幅に引き下げる。
経産省は素案に「野心的な見通し」と記した。だが、野心というより“無謀”が素案の実態を表している。再生可能エネの適地は限られ、原発は再稼働が見通せない上に新増設は凍結した。そして火力は一方的に削減する。ほぼ8年後とエネルギー供給にとってはごく身近な将来の計画とはとても言えない。
政府は2030年に温室効果ガスを13年度比46%削減すると国際社会に表明した。11月に気候変動対策の国際会議「COP26」が開催される。また、秋には総選挙も実施される。46%削減へのつじつま合わせと、選挙で原発新増設を争点としたくない政府・与党の思惑が、無謀な計画案を生んだといえる。
温暖化対策は、2050年のカーボンニュートラル達成が真に目指すべき目標であり、30年はその途上に過ぎない。COP26で政府が取り組むべきは、温室効果ガスの国際間の削減協力のルール整備である。欧州が主張する火力発電の急速な縮減策だけでは、新興国から理解を得られまい。
今回の素案で唯一評価できるのは、水素・アンモニアの活用を1%程度盛り込んだことだ。技術やコスト面で高いハードルがあるものの、50年につながる取り組みである。官民が協力して実現させたい。
同計画は、国民の命と暮らし、経済成長に不可欠なエネルギーを、安全に安定して低コストで環境に配慮して供給するためにある。素案は今後、意見公募にかけられる。幅広い意見を聴き、計画が実現可能なものへと修正されることを期待する。
(2021/7/27 05:00)
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