産業春秋／メッシ、パリへ

注目の新天地は花の都パリに決まった。サッカー界のスーパースターのリオネル・メッシ選手が、パリ・サンジェルマンＦＣに移籍した。ただ、前所属先のＦＣバルセロナからの退団会見では「この先もバルセロナにとどまりたかった」と涙ながらに語り、愛着あるクラブとの別れを悔やんでいた。

同クラブとの別れの原因は、クラブの逼迫（ひっぱく）した財務状況にある。コロナ禍で財政がさらに悪化し、スペインリーグが定める今季の総年俸上限額が激減。メッシを抱えることができなくなった。

欧州ではコロナ禍で多くのサッカークラブが打撃を被っている。国際会計事務所のＫＰＭＧによると、欧州６大リーグ優勝チームの前々季の合計収入は３億７１６０万ユーロ減少したという。

欧州でサッカーは経済を支える一部でもある。６―７月に開かれた欧州選手権では、イングランドでビール消費や宅配サービスの利用が急伸するなど、コロナ禍でも一定の経済効果をもたらした。

昨季は主要チームによる新リーグ構想が浮上するも、多くの批判を浴び撤回となった。メッシの移籍劇は、ファンの気持ちとは無関係に、巨大マネーに翻弄（ほんろう）されるスポーツビジネスを象徴する出来事だ。