(2021/9/20 05:00)
中国が環太平洋連携協定(TPP)への加盟を申請した。大国が陣容に加わることで自由貿易の新たな秩序づくりが前進するのか、中国包囲網にくさびを打ちたい中国の戦術に加盟国が翻弄(ほんろう)されるのか。加盟各国は経済安全保障とのバランスを見据えた慎重な対応が求められる。
中国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に続いてTPP加盟にも触手を伸ばすのは、アジアで通商の主導権を握って米国をけん制する狙いがある。中国は2022年秋には5年に1度の共産党大会を控えており、習近平国家主席が同大会で終身国家主席となる上でも自国経済の成長軌道を示したい思惑がのぞく。
中国は足元で景気減速の懸念がくすぶる。コロナ禍の再拡大を封じ込める行動規制が消費を停滞させ、不動産バブル対策で講じた住宅ローン金利の引き上げや大都市部での土地入札の一時停止などが、中国景気を減速させつつある。中でも不動産バブルは国内の格差問題を助長し、低所得層の不満が中国社会を不安定にさせかねない。多少の経済成長を犠牲にしてまで不動産規制に動いたのは、社会不安を沈静化させるためだった。
ただ、これは短期的な処方箋に過ぎず、中長期的には米国を抜いて世界最大の経済大国になることを目指している。中国は自国IT企業に規制の網をかけ、自国データの海外流出を防ぐような強硬な国家主義に基づき、独自の経済発展を実現しようと試みている。
そうした中国にとってTPP加盟のハードルは高い。今の中国のままで知的財産やデータ流通で公平性・透明性を担保するのは難しい。また日本が米国のTPP復帰前に中国との関係を優先する選択肢はないだろう。TPP加盟国のベトナムは中国と南シナ海をめぐる領有権問題を抱え、豪州はクアッド(対中包囲網)の一角を担う。
とはいえ、中国は日本にとって米国と並ぶ輸出相手国である。日本政府は中国と不即不離の関係を維持しつつ、経済安全保障と両立する解を求め続ける胆力が試される。
(2021/9/20 05:00)
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