(2021/10/13 05:00)
「本来、国家として整備しておくべき強靱(きょうじん)な防波堤を自らの手でせっせと内側から切り崩してきた」。先月89歳で他界した経済評論家の内橋克人さんは、最後の評論となった『コロナ後の新たな社会像を求めて』で述べている。
「不均衡国家」の現実を凝視すべき時が来ているのだ。第一に「労働の解体」がコロナ禍を機に噴き出した。正規雇用と非正規雇用という「差別の制度化」はいっそう強められた。
岸田文雄新政権は「成長と分配の好循環」を経済政策の柱に掲げる。所得再配分による格差の是正を焦点に、子育て世帯や非正規雇用者の支援を強調し、数十兆円規模の経済対策を打ち出すとしている。
政府はGoToトラベルなどコロナ不況の対症療法にとどまらず、内橋さんが構造問題に挙げた「労働の解体」「均衡ある国土の発展という理念の放棄」「所得移転の構造化」に斬り込む覚悟があるのか。
内橋さんの原点は、人間が人間として人間らしく生きられる社会の実現にある。経済の力はその道具にすぎない。コロナの教訓を構造改革に生かせるか。新政権が基本方針に掲げる「新しい資本主義」の正体とは。内橋さんの切れ味鋭い検証をもう少し敬聴したかった。
(2021/10/13 05:00)
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