(2021/10/15 05:00)
衆院が14日解散し、事実上総選挙に突入した。発足間もない岸田文雄政権にとって、初の国民の審判となる。
岸田政権は、富の再分配によって中間所得層を拡大する「新しい日本型資本主義」を掲げた。「新自由主義からの転換」を図り、「成長と分配の好循環」を進めていくという考え方だ。
小泉純一郎政権以降引き継がれてきた規制緩和や構造改革といった新自由主義的な政策は、日本経済を成長させる一方で、「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を生んだ」と言われる。
確かに、新自由主義は、先進各国に経済成長という果実をもたらした。半面で、経済的格差の拡大、民意の分断など、大きな課題に各国とも直面している。新自由主義に基づくグローバル化の加速で、グローバルに展開する巨大企業の声が強くなると、中小企業の声は国政に反映されなくなり、政治的影響力のバランスが崩れる。
特にいわゆるGAFAに代表される世界的企業のふるまいは、世界的に問題視され、国際課税の見直し議論も進んでいる。
行き過ぎたグローバル化が自国産業の衰退を招き、今回のコロナ禍でサプライチェーンの分断が起こると、資源や重要物資の調達に深刻な支障が生じる経済安全保障上の課題も露呈した。先進各国は自国産業を強化する道を模索し始めた。
新自由主義の弊害部分を見直し、中間所得層を拡大する新しい日本型資本主義へと舵(かじ)を切る方向性は正しい。バイデン米政権をはじめ、新自由主義からの脱却をはかろうとしている国は少なくない。政府は海外と緊密に連携をしながら、進めていくべきだ。
ただ、軸となる「成長と分配の好循環」の中身が見えてこない。金融所得課税の見直しは先送りとなったが、「分配なくして成長なし」というなら、分配戦略も早期に示すべきだ。
政府はきょう「新しい資本主義実現会議」を立ち上げる。成長と分配の好循環を実感する方策が議論されることを国民は待ち望んでいる。
(2021/10/15 05:00)
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