(2021/10/18 05:00)
一時的なバラマキで国民の歓心を買うより、経済成長につながる改革を応援したい。
総選挙は19日公示、31日投開票される。岸田政権は初めて国民の審判を受けることになる。
コロナ禍の対策を優先した菅義偉前首相は、総選挙に踏み切れなかった。議員の任期満了を目前にしての衆院解散となったことから、与野党とも十分に意識して準備を進めていたはずだ。ポスト・コロナの経済政策について、しっかりと議論を交わしてもらいたい。
今のところ、与野党とも公約は「目先の分配」に偏っている。コロナ禍で多くの国民と企業が傷ついた。飲食やサービス業を営む中小・零細な事業者や、その従業員への支援は必要だ。しかしそれがバラマキの人気取りになるようではいけない。
財務省の矢野康治事務次官が雑誌に発表した個人的意見が波紋を呼んでいる。矢野次官の意見は確かに、これまで繰り返されてきた財政危機と同じものだ。しかし、与野党ともに財政を省みない風潮は、危機を的確に捉えられなくなっている状態を示している。
平成バブル崩壊後、政府が何度も財政出動を繰り返した結果として現在の借金漬けの財政が出来上がった。直ちに破局が来ないとしても、建て直しを図らねばならない。その基盤は国民が豊かになることだ。
だが一時的な減税や支給金では本当の豊かさは実現しない。デジタル技術を活用した社会の効率化、脱炭素や国土強靱(きょうじん)化を目指すインフラの再構築など、社会変革を通じて経済を成長させなければならない。
そのためには国民の意識改革も重要になろう。マイナンバーカードによる諸手続きの電子化や、エネルギー効率の悪い機器の規制、リカレント教育を通じた個人のスキルの磨き直しなど、効果の高いものを早期に実現したい。
選挙戦では、各党首が足の引っ張り合いをするのではなく、経済成長に向けた議論を競ってほしい。それが分配を大きくし、国民生活の安定と将来の財政危機克服につながる。
(2021/10/18 05:00)