(2021/11/19 05:00)
大学の産学・社会連携で、基礎研究に対しても大型の資金支援が出はじめている。国際標準の環境を整備し、研究力を格段に上げることで国内外の財団などを引きつけている。政府で議論中の「世界と伍する研究大学」にも示唆を与えそうだ。
大学における応用的な研究に産業界の期待は集まるが、基礎研究は社会での活用が見えづらい。自然科学系でも基礎分野は研究費が十分でないとしばしば耳にする。その中で注目したいのは文部科学省事業の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)だ。
大学内の研究所などを“特別扱い”の拠点とし、若手研究者の国際公募、外国人研究者3割以上といった世界最先端並みの研究環境とする。研究者雇用などに拠点当たり年7億円(初期の拠点は14億円)が投入され、各拠点が別の手だてで確保した研究費で活動する仕組み。14拠点が採択されている。
事業開始から15年ほどたって拠点平均で国際共著論文が50%、「世界トップ10%論文」が20%と、通常の上を行く数字を実現している。そしてここに大型の民間資金が入ってきている。
9月に日本財団が大阪大学の感染症基礎研究に230億円を投じると発表した。核となるのが阪大のWPI拠点「免疫学フロンティア研究センター」で、同センターは先に中外製薬から100億円の基礎研究への資金も獲得している。また東京大学の拠点「カブリ数物連携宇宙研究機構」は、米国財団の寄付による基金の運用益で活動する仕組みを早期に確立。東京工業大学も、生命の起源という基礎研究への支援資金を、別の米財団から引き出している。
政府は10兆円の大学ファンドの支援先として、多様な財源を自ら確保して成長していく研究大学を想定している。
基礎研究は一般に“コストセンター”になるのに、WPIの一部事例は“プロフィットセンター”化していることに勇気づけられる。国際的な研究環境を特別区でなく全学で実現する、といった先進的な意識を研究大学には育んでもらいたい。
(2021/11/19 05:00)
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