(2021/11/22 05:00)
本当に苦しんでいる世帯や企業に迅速に支援が届く仕組みを考えなければ、不公平感は増すばかりだ。
政府はコロナ禍で傷ついた家計や企業支援を中心とした経済対策をまとめた。財政支出が55・7兆円、民間資金を加えた事業規模は78・9兆円にのぼる。
18歳以下の子ども1人当たり10万円相当の給付や、中小企業への最大250万円の給付が目玉施策である。
給付対象には疑問が拭えない。10万円給付は与党間の調整で年収が960万円以下世帯となったが、年収基準は世帯主。既存の児童手当制度で登録された口座を活用して迅速に給付するという考えは理解できるが、世帯収入の把握は困難ではないはずだ。単身世帯で収入減少に直面する人もいる。
中小企業への支援も経営危機にある企業にとって250万円は焼け石に水である。一方で給付要件を緩和すれば、本来なら必要のない企業にも給付することになり、モラルハザードを生じる恐れもある。
コロナ禍が始まって約2年。本当に困難にある人や企業に手厚い支援をするのが本筋なのに、実態を把握する仕組みを作らずに来た結果が、経済対策の財政支出をふくらませることになった。財源の多くは赤字国債に頼ることになる。
岸田文雄首相は「今は財源論より経済対策を優先させる時」と言うが、給付が景気対策か困窮対策なのかも判然としない。国民が納得する給付でなければ、不公平感は増大する。
「成長と分配の好循環」を進めるには、成長戦略をやりきることが大前提である。10兆円規模の大学ファンド、クリーンエネルギー整備、地方のデジタルインフラ整備、経済安全保障基金など、項目は多いが実効性は未知数なものも多い。
地方のデジタル化は過去にも施策が講じられたが有効に機能していない。安全保障基金も規模は米国などと比べ小さい。一時的な補助金より、事業が根付く総合的な施策が必要だ。
意味のある成長戦略の加速こそが最大の経済対策である。
(2021/11/22 05:00)