(2021/12/9 05:00)
親族や従業員に経営のバトンを引き継ぐことが主流だった中小企業の間で、M&A(合併・買収)を選択するケースが増えている。より多くの企業が円滑な事業承継につなげられるよう、実情に即したきめ細かな支援が不可欠だ。
政府が全国に設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」が関わったM&Aは、2021年度上半期、過去最多となった。コロナ禍で苦況に立たされる企業が売却に踏み切るケースや、経済再開をにらみ、自社に足らない経営資源を事業買収の形で補完するなど背景はさまざまだが、中小にM&Aが浸透しつつあることを裏付ける。
経済産業省によると、中小企業のM&Aは年間4000件規模に拡大しており、潜在的な事業者数は60万者近くに上るという。売り手と買い手をつなぐ仲介事業に参入する企業や、インターネット上でマッチングを図るプラットフォーマーも増加傾向にある。
こうしたビジネスの広がりは、より多くの候補企業と接点を持てる利点がある一方、資産査定などに多額の費用がかかることや、手続きの分かりにくさを理由に敬遠する経営者も少なくない。適正な取引ルールの徹底やM&A支援機関の登録制度など、政府が進める施策は円滑な事業承継の前提となるだけに、実効性が期待される。
民間では採算ベースに乗りにくい小規模M&A案件への支援も課題だ。東京商工会議所によると相談に訪れた企業の半数近くが売上高1億円以下と小規模企業だった。仲介手数料負担が重くのしかかる企業の承継ニーズに応えるには、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関の下支えや税制面などの負担軽減が一層重要になる。
経営者の高齢化に伴う事業承継問題は10年以上前から指摘され、政府はガイドラインの策定など、さまざまな手を打ってきた。一連の施策効果とコロナ禍で承継に活路を見いだす動きが相まって目下の成約件数増につながっている。成長に向けた前向きな選択肢としてM&Aを活用したい。
(2021/12/9 05:00)
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