社説/電力不足管理に新方式 燃料確保に加えて多面的努力を

(2021/12/10 05:00)

昨冬のような電力需給の深刻な逼迫(ひっぱく)を防ぐには、長期的かつ多面的な努力が必要だ。

国と電力広域的運営推進機関、一般送配電事業者らは新たに「キロワット時(kWh)余力率管理」を始めた。新方式では、まず電力会社が2週間先までの気温や天候予測から電力需要と再生可能エネルギーの変動予測を出し、この間の燃料消費量を予測する。この予測値と実際の燃料在庫の差異をもとに、追加発電できる割合を「余力」として算出する。

エリアごとの余力ではなく、連系線を利用した電力融通を加味して燃料を全国で効率的に利用できるよう工夫した。それでも連係線の能力には限りがあるため、地域によって余力の差が出る。初公表した12月1週目分は東京と北海道・東北、他の6エリアの3ブロックに、2週目は北海道・東北・東京と、他の6エリアの2ブロックの余力が異なる結果となった。

昨冬は厳冬に加え、東アジアの液化天然ガス(LNG)需要急増、パナマ運河の遅延、発電所トラブルなどが重なった。それぞれ予兆はあったが、電力需給への影響を定量的に評価する仕組みがなく、逼迫を招いた。

急な電力需要に対して最も即応性があるのはLNG火力発電所だ。しかしLNGを産出国からスポット調達するには2カ月かかる。国は11月から電力会社に2カ月先の動向をヒアリングしている。

加えて今回のkWh余力率で週次の燃料在庫を確認する。現状では、電力各社がLNGの長期契約を増やすなど対策を取っており、10年に1度の厳気象でも対応できる見通しという。

とはいえ電力の需給を正確に見通すことは難しい。風力発電が多い欧州は今年、風が吹かないことで電力不足に陥った。また燃料が十分に確保できたとしても、大型の発電設備が故障すれば需給バランスは容易に崩れてしまう。

長期的には原子力発電所の再稼働による予備力の確保が必要だ。さらに省エネの徹底、自家発電設備の稼働率向上など需要側の協力も欠かせない。

(2021/12/10 05:00)

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