(2022/1/28 05:00)
日本のお家芸でもあるゲーム産業の強みを産業界全体の強みとして生かし、実世界とサイバー空間との融合化で新たな価値を生み出す“デジタルツイン”の流れを加速したい。
ゲームはBツーC(対消費者)、デジタルツインはBツーB(企業間)であり、それぞれ利用目的やユーザー対象は異なる。だが、仮想現実(VR)や3次元(3D)描画などの技術は共通点が多く、二つの世界が交わることによる相乗効果への期待は大きい。
橋渡し役で注目されるのはインターネット上の3D仮想空間「メタバース」だ。メタバースは萌芽(ほうが)期と言われるが、技術革新の先導役はオンラインゲーム業界に他ならない。
こうした動きを先取りするかのように、米マイクロソフト(MS)が米アクティビジョン・ブリザードの買収に名乗りを上げ、687億ドル(約7兆8800億円)を投じると表明したのは興味深い。
規制当局の承認を得れば、MSはゲーム業界の売上高において世界3位に躍進するとともに、メタバースを起点にBツーCとBツーBの双方にリーチする道が開けるからだ。
昨今のメタバースブームの火付け役は、社名をフェイスブックから米メタ・プラットフォームズへと変更したマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)だが、MSによる大型買収はそのお株を奪う一手としても注目されている。
一方、デジタルツインはITの新潮流として、緒に就いてきたところ。今は製造業や物流業が中心だが、適用領域は広い。
例えば東京都が進める「デジタルツイン実現プロジェクト」。都内の建物や交通状況を3Dマップ化したり、センサーデータなどを用いて実世界と同じ環境をデジタル空間に再現したりする構想。人工知能(AI)を用いた災害シミュレーションなども志向する。
こうした取り組みはメタバースとも親和性がよく、ゲーム産業が培ってきた技術が生かせる。日本勢はここを成長領域として、開発協業を促進すべきだ。
(2022/1/28 05:00)
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