(2022/5/4 05:00)
大型連休の少し前、興味深い判決があった。高額の不動産を購入し、相続税をゼロと申告した相続人に対して国税当局が3億円を追徴課税。これを不服とした相続人が最高裁判所まで争ったケースだ。
巨額の借金をしてタワーマンションなどを購入する。負債はそのままだが、不動産の相続評価は路線価に基づき、実勢より大幅に安く評価される。富裕層では一般的な相続対策だ。ただ本件は国税が〝伝家の宝刀〟と言われる「国税庁長官の指示」を発動。路線価評価を否認した。
判決を読む限り事実関係に争いはなく、焦点は「多数の相続で使われる路線価を例外的に認めなくていいか」であったように思う。判決は国税の処分を妥当とし、原告が敗訴した。
個別事例の評価は避けたい。ただ「税務署は怖い」と感じた個人事業者もいるだろう。都市部の不動産の実勢価格はバブル期以上に高騰している。路線価で試算していた相続が、いざという時に否認されたら困る。
専門家の意見は「ちゃんと事業をしている限り心配不要」というものが多いようだ。事業承継税制は相続税の減免に重点を置いているほどで、判決とは真逆と言えよう。稼ぐに追いつく税金なし、と思いたい。
(2022/5/4 05:00)