(2022/6/3 05:00)
2022年度の夏と冬の電力需給が厳しくなる見通しだ。不測の事態で需給が逼迫(ひっぱく)すれば大規模停電につながる恐れがあり、政府をはじめ企業・家計には万全の対策を求めたい。
経済産業省によると、電力供給の余裕を示す「予備率」は、10年に一度の厳しい暑さを想定した場合、7月には北海道と沖縄を除く8電力管内で最低限必要な3%台に低下する。冷え込みが厳しくなると、2023年1―2月には東京電力管内で予備率はマイナスとなり、6電力管内で3%を下回る。
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い稼働率が低下した火力発電所の休廃止が増加していることや、22年3月に発生した福島沖地震の影響で供給力が不足していることが背景にある。
需給逼迫に備え、経産省は対策をまとめた。前日に予備率が3%を下回ると想定される場合に出す「電力需給逼迫警報」の発令時刻を18時から2時間繰り上げ、5%を下回る見通しとなった段階で出す「注意報」と2日前の「準備情報」も新設する。3月に逼迫警報を初めて発令した際の教訓を踏まえた措置で、企業や家庭が節電準備の時間を確保する上で、一定の評価ができる見直しと言えよう。
一方、3月の警報発令後に産業界に実施したアンケートによると、節電要請に対する協力意思はあるが具体的にとるべき行動や切迫度合いが分からず、消灯や暖房の温度調整といった身近な節電行動にとどまった事業者が多かった。こうした事業者に対し、具体的な節電行動と効果をあらかじめ示し、需給逼迫時に速やかな行動を促す必要がある。経産省は東日本大震災以降に作成・活用している「節電アクション」を参考に、早期に提示してもらいたい。
同省は休止している火力発電所の稼働や、安全が確保された原子力を最大限活用する方針も示した。綱渡りの電力需給が恒久化するようなら、電源構成をあらためて見直す必要があるのではないか。併せて、管理が難しい再生可能エネルギー向け蓄電池や地域間で電力を融通する送電網の整備も急ぎたい。
(2022/6/3 05:00)
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