(2022/6/30 05:00)
対立に縛られず、関係を結ぶことが求められる。
政府の2022年版通商白書は、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえた現状を「冷戦後かつてないほど経済的分断への懸念が高まっている」と分析。自国中心主義や経済安全保障の重視が「国際経済秩序の歴史的転換点となる可能性」を指摘した。
以前から世界貿易機関(WTO)体制での自由貿易の限界が指摘され、2国間の自由貿易協定(FTA)や多国間経済連携による事実上のブロック経済化が進んできた。ウクライナ危機で、この分断がより鮮明になったということだ。
同時に白書は、新興国・途上国の多くはロシアに対して経済制裁などを控え、中立的な政策を示しているとしている。エネルギーや食糧に加えて、途上国はロシア産の肥料にも大きな部分を依存している。米欧主導の制裁は、先進国と途上国の南北問題につながる恐れがある。
こうした地政学リスクの高まりの一方で、「共通価値」が通商の重要課題として浮上した。気候変動への対応や人権・労働・民主主義などの価値観が、新たな国際ルールになりつつある。白書は「共通価値の可視化とサステナブルなグローバルバリューチェーンの構築」の必要性を強調している。
分断の一方で、こうした共通価値が台頭していることは企業行動でも重要だ。経済産業省幹部は「賢くアプローチしなければならない」と話す。
例えばインドは自由経済だが、米ロいずれかの陣営に色分けされることを嫌う。東南アジア諸国連合(ASEAN)にはベトナムなどロシアと関係の深い国が多く、シンガポールを除けば経済制裁に加わっていない。
しかし、そうした国も脱炭素や持続可能な循環経済には賛同しており、また中国との関係など、地域の安全保障問題にも敏感だ。日本としては、個々に可能な範囲で共通の価値を見いだし、貿易や投資を続けていかなければならない。
個々の企業にもまた、そうした賢さが求められる。政府の適切な情報提供に期待したい。
(2022/6/30 05:00)
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