(2022/8/2 05:00)
一時は1ドル=140円をうかがう円安基調だった為替相場が、1日の東京外国為替市場では同132円台で推移した。円安基調がピークアウトへの転換点を迎え、輸入物価の上昇が抑制されることを期待したい。
円高・ドル安基調への揺り戻しは、米国経済の減速懸念が背景にある。米連邦準備制度理事会(FRB)は7月末の会合で2カ月連続となる政策金利の0・75%引き上げを決めた。通常の3倍となる利上げ幅で、景気の先行き懸念から米国の長期金利は下降基調にある。加えて年内に3回残されたFRBの会合では利上げペースを緩和する可能性があり、日米金利差の一段の縮小観測から円が買われやすくなっているようだ。
国際通貨基金(IMF)がまとめた2022年および23年の世界経済見通しの中で、興味深い予測が盛り込まれた。23年の実質成長率について、米国が1・0%、ユーロ圏が1・2%の見通しであるのに対し、日本は欧米を上回る1・7%成長が見込まれている。歴史的なインフレと金融引き締めにより経済減速する欧米に対し、日本は異次元金融緩和が景気を下支える局面変化が期待される。
これまでは米国と真逆の金融政策が円安を助長し、この円安が高騰する食料・エネルギーの輸入物価をさらに引き上げる負のスパイラルに陥っていた。行き過ぎた円安の是正と金融緩和効果が日本経済にどの程度プラスに作用するかを注視したい。
ただ世界の景気後退は日本経済を冷やす。4―6月期の実質国内総生産(GDP)でその兆しがあることに留意したい。米国は2四半期連続で減少し、ゼロコロナ政策の中国はほぼ横ばい。ユーロ圏は増加も、ロシアからのガス供給問題を抱えるドイツが横ばいにとどまった。
円安是正は日本経済にプラスに作用するものの、その根拠が米国および世界経済の減速では元も子もない。コロナ禍、ウクライナ情勢、沈静化しないインフレ、新興・途上国の債務問題など、先行き不透明な課題に一定の解を見いだせない限り、円安是正も予断を許さない。
(2022/8/2 05:00)
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