(2022/8/11 05:00)
第2次岸田改造内閣が10日発足した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を見直しつつ、産業界にとって懸念される景気の下支えとエネルギーの安定供給、さらに中小企業対策に万全を期してもらいたい。
内閣府が15日に発表する4―6月期の実質国内総生産(GDP)は2四半期ぶりのプラス成長が見込まれるが、コロナ禍が比較的落ち着き、行動規制の緩和により個人消費が増えたことによる。足元の7―9月期は新規感染者が高原状態にあり、医療機関の逼迫(ひっぱく)が警戒されている。7月の倒産件数が底打ちから反転増に向かっている点も気がかりだ。
岸田文雄政権は予備費5・5兆円を確保した現行の緊急対策に続き、看板政策「新しい資本主義」の実現と物価高対策を兼ねた2022年度第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出することを検討する。自民党内には積極的な財政出動を求める声もあるが、物価高に困窮する業種に集中投資するなど、メリハリを利かせた予算編成が求められる。自民党の萩生田光一政調会長の調整力にも期待したい。
電力の安定供給と脱炭素社会の実現に向けた改革にも踏み込んでもらいたい。ウクライナ情勢により化石燃料の調達難と価格高騰に見舞われ、世界はエネルギー安全保障が脅かされている。日系商社が出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の事業主体もロシア企業となり、先行きは不透明だ。
電力需給の逼迫は夏より冬に懸念される。岸田政権は「最大9基の原発再稼働」を掲げるが、対象の原発は西日本に偏る。老朽化した火力発電の再稼働はトラブルも想定され、設備管理の徹底が求められる。中長期的には原発の新増設もタブーなしに議論し、安全性が高いとされる革新軽水炉などの実用化も模索する必要があるだろう。
中小企業への目配りも欠かせない。仕入れ価格の上昇分を取引価格に転嫁できない下請けが少なくない。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの債務も抱える。政府には取引適正化の後押しも求められる。
(2022/8/11 05:00)