(2022/8/12 05:00)
国際法に反する判決で、日本企業に損害を及ぼすことは断じて許容できない。
日韓関係のレッドラインが近づいている。韓国最高裁が戦時中の元徴用工への賠償を命じた判決で、近く差し押さえた日本企業の資産の現金化が決まる恐れが大きい。日本政府は猛反発しており、韓国側が現金化に踏み切れば報復措置の発動も視野に入れている。
韓国の尹錫悦大統領は5月の就任以来、精力的にこの問題に取り組んできた。しかし現地の報道を見る限り、その努力は報われていない。韓国政府が解決策を模索するため発足した「官民協議会」から原告側代表が離脱を表明。あくまで判決の履行にこだわる姿勢だ。
日本側には、十分な法理がある。両国政府が1965年に結んだ日韓請求権・経済協力協定には「両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が(中略)、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と明記している。これを一方的に覆すことは国際法に反している。
当然ながら韓国政府も「解決済み」の立場だ。自国の最高裁判決への対応に苦慮しており、日本政府にも協力を求めている。しかし、この問題がこじれた責任は韓国側にある。原告側を説得して何らかの解決策を示さなければならない。その上で日本側としても、可能な範囲で協力を模索したい。
いわゆる徴用工は、戦時立法に基づく合法的なもので、日本人の若者も動員された。韓国国民は事実を知らず、あたかも奴隷労働のように受け止めている。韓国政府の努力が足りないと言わざるを得ない。
もし原告側が資産の現金化を強行し、日本が報復する事態になれば、両国関係は破たんの危機にさらされる。友好国とは呼べなくなり、経済関係の縮小や、東アジアの安全保障にまで影響を及ぼしかねない。
韓国政府も、事態の深刻さは十分に承知していよう。国際法を踏み外す行為を阻止するのは今しかない。国民感情を超えた韓国の英断を求める。
(2022/8/12 05:00)