(2022/8/15 05:00)
終戦から77年。「戦没者を追悼し平和を祈念する」きょう15日に、平和の尊さをあらためて心に刻みたい。ウクライナではロシアが侵略を続け、中国は台湾への軍事威嚇を常態化するという。北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返す。岸田文雄首相はこれら海外情勢を踏まえて日本は「戦後最大級の難局」にあると形容する。いかに難局を乗り越えるのか、年末に向けた日本政府の協議を注視したい。
政府は台湾有事などを念頭に防衛3文書の改訂を年末に閣議決定する。今後5年間の防衛費や主要装備の数量、反撃能力の保有の是非などの重要案件が盛り込まれ、これを基に2023年度当初予算案が編成される。
岸田首相は「反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と表明。22年版の防衛白書でも、英仏独の国民1人当たりの国防費がそれぞれ日本の約2―3倍に達すると記している。米国の世界への影響力が低下し、覇権主義的な行動を強める中国を前に、日本の防衛費増額はやむを得ない。
だが防衛費の内容や、予算が硬直化する中での財源のあり方など課題も多い。第2次岸田改造内閣で防衛相に再登用された浜田靖一氏は「南西諸島の防衛体制を目に見える形で強化したい」と意欲を示す。中国は東シナ・南シナ海への海洋進出、南太平洋のソロモン諸島との安全保障協定の締結、さらに台湾を取り囲むように行った軍事演習は「台湾統一へ武力行使も辞さない」戦略を浮き彫りにした。
この軍事演習では、中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下しており、台湾有事が日本の安全保障も脅かすことを突き付けられた。中国を過度に刺激せず、いかに防衛力を引き上げるか、難しい課題を解く必要がある。
米国は台湾有事の際に軍事介入するかを示さない曖昧戦略を維持している。米国内では戦略の明確化を求める声も出始めている。日米は中国との対話継続で最悪の事態を回避しつつ、中国抑止のあり方をあらためて見つめ直す時期を迎えている。
(2022/8/15 05:00)