社説/IPEF閣僚会合 「経済安保」確立へ結束強化を

(2022/9/9 05:00)

米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合が8、9日(現地時間)の日程で米ロサンゼルスで始まった。有事の際に半導体などを参加14カ国で融通し合う供給網の確立などを目指した構想で、正式な交渉開始を宣言したい意向だ。対中国を念頭に置いているだけに、参加国がどこまで結束できるかが焦点になる。各国が経済安全保障の意義を共有し、円滑に始動することを期待したい。

IPEFには日米と韓国、豪州、ニュージーランド、インド、フィジー、さらに東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち7カ国の計14カ国が参加する。トランプ前政権は2国間の貿易協定を重視したが、バイデン政権はインド太平洋地域で存在感を増す中国に対抗し、多国間での同地域への本格関与を目指す。自由、民主主義、人権などの価値観を共有する国が連携し、覇権主義的な行動を強める中国への経済依存を引き下げるものと評価したい。

IPEFは貿易、半導体やレアアース(希土類)などの供給網、インフラ・脱炭素、税・反汚職の4分野から成り、会合後に各分野の閣僚声明が出される予定。14カ国は参加する分野を自由に選択でき、各分野の参加国数も焦点の一つになる。

IPEFは米国の労働者の反発を見越し、関税引き下げといった貿易自由化は行わない。米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)に代わる次善の策との位置付けになる。米国での事業拡大を狙うASEANには魅力に乏しいとの指摘があるほか、中国とも経済で深く結び付いているだけに、どこまで結束できるのか、懸念が残る。

これまでの貿易は関税引き下げによる低コスト化が求められたが、今後は台湾有事や感染症などによる供給網の寸断を回避し、安定調達できる体制を確立することが重要になる。経済安全保障の観点から、貿易の価値観は低コストから安定調達に移行しつつある。ASEAN各国と経済安保の価値観を共有できるよう、米国と日本は主導力を発揮してもらいたい。

(2022/9/9 05:00)

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