(2022/9/23 05:00)
彼岸には家族で墓参りをするのが恒例になっている。洗剤やタワシ、雑巾などの清掃用具を防災袋のように一式そろえてある。墓掃除にこれほど手慣れた家族はいないと自負している。
寺の住職からコロナ禍で墓参り代行業者を利用する檀家(だんか)が増えていると聞いた。高齢者や転勤族に重宝されているようだ。知人は子どもに負担をかけたくないからと永代供養を検討している。霊園や寺が子どもに代わり遺骨を管理・供養してくれる。
若いころ上野発福井行きの夜行急行列車で隣に乗り合わせた初老の男性のことが今も忘れられない。列車が動き出すと感極まった様子で話しかけてきた。「30年ぶりに両親の墓参りに行くんです。親不孝でしょう」。
わけあって故郷は遠かったのだろう。心の重荷をやっと下ろせる日が来る。そんな喜びが言葉ににじんでいた。供養は故人をしのぶことだが、供養する者が救われることでもある。安らぎや活力を得るのが本意と教わった。
コロナ第7波がようやく収束しつつある。きょうは彼岸の中日に当たる秋分の日。家族や友人と故人の思い出に浸るのもいい。形式やしきたりにとらわれず、各人がそれぞれのやり方で故人へ思いをはせたい。
(2022/9/23 05:00)