(2022/9/27 05:00)
東西冷戦終結と中国の世界貿易機関(WTO)加盟により加速したグローバル経済。地政学リスクが希薄になった世界ではイデオロギーを超えて経済成長に専念でき、デジタル化も相まって各国は密接に溶け込んだ。だが、それゆえ地政学リスクや米中対立などで供給網は寸断されやすく、経済安全保障問題が世界を分断しつつある。友好国と供給網を再構築する「フレンド・ショアリング」を拡大する一方、日中は対話の継続で対立と協力のバランスを保ちたい。
米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」参加14カ国は、台湾有事などの際に半導体やレアアース(希土類)などを融通し合う供給網の確立を目指す。日米韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが連携し、東アジアの経済安保体制を築くものと評価したい。ただASEANにとって米中は1、2位の貿易相手国であり、非同盟・中立を貫いている。西側・東側の二者択一には同調しておらず、どこまで機能するかは読みにくい。
インドもイデオロギーより国益を優先する。中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に参加せず、米国主導のIPEFには加わるが貿易分野の交渉には合流せずに自国産業を保護する。中国とは国境問題を抱えながら、台湾有事の際に中国への経済制裁を行わない可能性もあり、日米はインドとの対話も継続することが肝要だ。
韓国も半導体の最大の輸出相手国が中国だ。米国主導の米日韓台4カ国・地域による半導体供給網「チップ4」構想には慎重で、中国への配慮ものぞく。
中国はWTO加盟後の13年に巨大経済圏構想「一帯一路」を打ち出し、20年には15カ国がRCEPに署名するなど世界経済への影響力を高めており、フレンド・ショアリングを形成してもどこまで機能するかは不透明感が残る。他方、中国は日本との外交の扉を閉ざしておらず、8月の日中高官会談では「重層的な意思疎通の重要性」を確認した。日本は欧米と結束した経済安保の確保と同時に、隣国との意思疎通も深めておきたい。
(2022/9/27 05:00)
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