(2022/9/28 05:00)
日中が国交正常化した1972年、中国の国内総生産(GDP)は日本の約35%に過ぎなかった。だが世界貿易機関(WTO)加盟後、瞬く間に米国を脅かす経済大国に成長し、中国の2020年のGDPは日本の約3倍に。経済大国化に伴い権益確保を最優先する覇権主義の行動を強め、東アジアの安全保障を脅かすに至った。ウクライナ情勢は中国の台湾侵攻を想起させる。日米は中国との対話の継続により、最悪の事態を回避する中国抑止策を模索したい。
12年の日本の尖閣諸島国有化で中国との“政冷”が決定的となった。中国は東シナ・南シナ海への海洋進出や南太平洋・ソロモン諸島との安保協定締結など覇権主義的な動きを強める。台湾近海の軍事演習は「台湾統一へ武力行使も辞さない」中国の戦略を明確にした。軍事演習では弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に落下し、台湾有事は日本の安保に直結することが突き付けられた。
日米同盟の強化、さらに日本の防衛費増額はやむを得ない。日本政府は年末に改訂する防衛3文書に今後5年間の防衛費や「反撃能力」のあり方などを盛り込む。中国を過度に刺激せず、いかに財源を確保するのか、議論の深まりに期待したい。
日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」、さらに「中国の脅威に立ち向かう」ことを初めて行動指針に盛り込んだ北大西洋条約機構(NATO)が台湾有事で機能するかも今後の焦点だ。
バイデン米大統領による台湾への軍事介入発言やペロシ米下院議長の台湾訪問などで米中関係は緊迫化している。中国にとって領土・人権問題はレッドライン(超えてはならない一線)。米国の「曖昧戦略」効果が希薄化していないか懸念される。
世界経済に溶け込んだ中国はロシアとの距離を置くなど国際社会での孤立を恐れる。またロシアの戦況劣勢は海を隔てた台湾侵攻の難しさを中国に痛感させたと期待したい。台湾有事で西側諸国と中国の対立が深まれば世界経済は大打撃を受ける。台湾有事は中国を利さないことも粘り強く訴え続けたい。
(2022/9/28 05:00)