社説/北朝鮮ミサイル発射 経済制裁の”抜け道”中国に懸念

(2022/10/5 05:00)

 東アジアの安全保障があらためて脅かされている。北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイルは日本列島を通過し、これまでで最長となる約4600キロメートル先の太平洋上に落下した。日本列島通過は5年ぶり。北朝鮮への制裁の抜け道である中ロ、中でも中国がミサイル発射抑止に転じる事態にならなければ、北朝鮮の暴挙は収まりそうにない。北朝鮮との交渉が途絶えた米国の手詰まり感も懸念され、今後の動向に警戒を強めたい。

 北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、この10日間で5回目。世界がウクライナ情勢に目を向けている間隙(かんげき)を縫うような矢継ぎ早の発射だ。核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に発展する可能性も指摘されている。トランプ前政権が初の米朝首脳会談を実現し、ミサイル発射を手控えていたのに対し、バイデン政権には外交の扉を閉ざしている。対話の重要性を見て取れる。

 懸念されるのは中国の立ち位置である。北朝鮮のICBM発射後の5月に開かれた国連安全保障理事会で、北朝鮮への経済制裁を強化する決議案が中ロの拒否権行使で否決された。中国が北朝鮮制裁に拒否権を行使したのは初めてで、対中強硬姿勢を強めるバイデン米政権を揺さぶったのは間違いないだろう。

 この国連安保理に先立って開かれた日米首脳会談で、バイデン大統領は台湾有事の際に軍事介入する考えを示唆した。中国のレッドライン(越えてはならない一線)を越えた発言で、中国はロシアとも歩調を合わせる形で北朝鮮への制裁強化に反対した。中国はロシアへの経済制裁でも抜け道となっており、中国が国際秩序の再構築を進める上で大きなハードルになっていることに留意する必要がある。

 日本政府は中国との対話を継続し、東アジアの安全保障の確保につなげたい。また、年末に閣議決定する防衛3文書の改訂には、今後5年間の防衛費や主要装備の数量、反撃能力のあり方などが盛り込まれる。中国や北朝鮮を過度に刺激せず、安保上効果的な施策とは何か、議論の深まりに期待したい。

(2022/10/5 05:00)

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