(2022/10/14 05:00)
中国経済が習近平体制によって大きな転期を迎えている。経済成長に伴って生じた経済格差が共産党の思想と相いれなくなり、国民皆が豊かになる「共同富裕」の考え方が経済成長を鈍化させている。不動産業などの民間企業を規制で縛り、党が統制しやすい国有企業を支援する「国進民退」の考え方は産業競争力をますます低下させる。中国経済はピークアウトに向かうのか、中国共産党大会での政策方針の中身を見極めたい。
中国経済は鄧小平時代の改革開放路線で競争原理が広がり、高度成長を実現した。鄧が唱えた、豊かになれる者から先に豊かになる「先富論」は一方で経済格差を拡大させた。産業構造が変化し、非製造業が国内総生産(GDP)の過半を占めると格差はさらに広がり、習体制は富裕層の増加が国民の不満を増幅させると警戒。中国政府を上回る個人情報を持つIT企業や不動産バブルによる所得格差は党の許容を超えたのだろう。
習体制の「共同富裕」は鄧小平の「先富論」からの脱却を意味する。不動産バブルの火消しとして2020年に不動産開発会社に融資制限を設け、開発会社の信用不安を招く。21年には電子商取引大手のアリババが独占禁止法違反として巨額の罰金を科され、IT34社には独禁法を順守するよう圧力を加えた。学習塾の新規開業を許さず、既存の塾を非営利団体としたのも教育費に苦しむ家計の不満を軽減するためだったが、成長産業がリストラを迫られている。
他方、米国との覇権争いという外的要因も、習体制の経済思想を転換する要因になったようだ。党が直接介入できる国有企業を産業補助金で支援し、半導体などの国産化を急いでいるように、党は経済活動に対する統治を強化している。
習体制が発足した12年以降の中国の実質成長率は1ケタ台のまま徐々に低下し、国際通貨基金(IMF)によると22年はゼロコロナ政策の影響で3・2%に停滞する見通しだ。格差を伴う経済成長が許容されない中国経済が、コロナ収束後に大きく浮上するかは予断を許さない。
(2022/10/14 05:00)
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