(2022/10/21 05:00)
2023年度の税制改正は、金融所得課税の強化と少額投資非課税制度(NISA)の拡充により、所得格差の是正と投資喚起の両立を目指したい。
自民党税制調査会が見直しを検討する金融所得課税は「1億円の壁」と呼ばれる富裕層優遇の課題を抱える。給与所得は累進的に最大55%(地方税を含む)まで課税される一方、株式譲渡益や配当金などの金融所得に課される税率は一律20%(同)で、総所得1億円を境に所得税の負担率が下がっていた。
岸田文雄首相は「中間層の拡大」「成長と分配の好循環」を掲げ、富裕層との所得格差是正に向けた金融所得課税の見直しに意欲を示していた。だが「貯蓄から投資へ」の流れに逆行すると受け止めた株式市場が反応し、株価が下落する“岸田ショック”により22年度税制改正では議論が見送られた。自民税調が23年度税制改正で議論の対象に加えたことを評価したい。
財務省の資料によると、総所得1億円以上の富裕層の所得のうち、上場株式の売却益は14%に過ぎない。課税強化の対象とする富裕層の線引きや、一律20%の税率を累進課税にするなどの工夫で、株式市場への影響をさらに小さくすることができよう。東京、大阪、福岡が目指す国際金融都市構想や一般投資家への影響に配慮した改正案を探り、税の公平性確保と所得格差是正につなげてもらいたい。
他方、NISAの拡充・恒久化により、貯蓄から投資への流れを加速する必要がある。22年3月末の個人の金融資産は前年比2・4%増の2005兆円に達し、うち現預金が1088兆円と全体の54%を占める。過剰貯蓄を投資に振り向けることで経済の活性化(成長)と資産所得の増加による富裕層との格差縮小の効果を期待できる。
14年に始まったNISAは、年間投資枠が120万円で5年間投資できる「一般NISA」、同40万円で20年間投資できる「つみたてNISA」などがあり、非課税期間は順に23年、42年までの時限措置だ。制度の恒久化や非課税投資枠の拡大などにより長期投資を促したい。
(2022/10/21 05:00)
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