(2022/11/15 05:00)
高等専門学校(高専)制度の創設から60周年を迎えた。国内生産を立て直す意味でも高専の質を高めていく節目としたい。
文部科学省は2023年度から5カ年間の次期教育振興基本計画の中に、大学や高専の機能強化を盛り込む。これに先立ち政府の教育未来創造会議が提言をまとめ、民間からも経団連などが要望を提出した。
いずれもイノベーションに資する人材の創出を目的に、高度化や国際化を進めるもの。また経団連は産業界の立場で、データサイエンスの必修化や海外留学の拡大など数値目標を設定するよう求めた。
「ソサエティー5・0」を実現し、日本の国際競争力を高める上で必要な改革と言える。一方で検討中の方針の多くが大学と高専を一緒にしている点は問題である。大学も高専も、理系の専門技術者を養成するという意味では似ている。しかし両者に求められる人材は違う。
高専は5年間一貫教育であり、学生は大学受験のような競争を経ずに、技術者に必要な教養と体系的な専門知識を身に付けられる。また大学に比べて実験・実習に重点を置いていることも特徴だ。高専の卒業生は生産現場などの専門家として産業界から期待され、企業からの求人も高い水準にある。
むろん高専も大学と同様に、イノベーションの創出に向けてカリキュラムを改めねばならない。しかし、それは同じ土俵ではなく、より高専の専門性を生かす方向であるべきだ。
政府の教育未来創造会議は改革工程表の中で「(工業などの)専門高校から高専への改編」を検討する一方、産業界と連携し、デジタルや半導体の実践的な教育を通じて高専の幅を広げることを打ち出している。単にカリキュラムの見直しだけでなく実験・研究設備の充実など公的予算の支援も必要となろう。
最近の円安や、経済安全保障などを背景に、工業生産の国内回帰が続いている。現場に強い高専の人材の重要性は、ますます高まっている。政府が高専の特色を生かした高度化策を進めることを求める。
(2022/11/15 05:00)