(2022/11/24 05:00)
政府の有識者会議は22日、防衛力強化に関する報告書を岸田文雄首相に提出した。焦点の一つである防衛費の財源は「幅広い税目」による増税で賄うよう提言した。歳出改革を徹底し、国債に頼らず、国民全体で負担するべきとの提言を政府はしっかりと受け止め、産業界の設備投資などに水を差す法人増税に偏らない財源確保を求める。
政府は「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」がまとめた報告書を踏まえ、国家安全保障戦略などの3文書の改定と2023年度の防衛予算を決定する。5年以内の防衛力の抜本強化は、東アジアの一段の緊迫化に備えた必要不可欠な施策であると、国民の理解を得ることも政府には求められる。
政府・与党は法人税や所得税などの増税や国債発行など、複数の財源確保を想定する。賃上げを制約する法人増税や、消費に影響する所得増税を直ちに行うのは難しく、増税を将来に先送りした「つなぎ国債」の発行も選択肢に浮上している。
有識者会議は、歳出改革により防衛費の一部を捻出した上で幅広い税目への増税で財政規律を順守するよう要望する。経団連の十倉雅和会長も「広く薄く、社会全体、国民全体で負担するのが適当」としており、経団連との主張とも合致する。つなぎ国債を発行する場合も、幅広い税目で返済してもらいたい。
今回の報告書では反撃能力の保有と増強、国のサイバー安全保障の司令塔機能の大幅強化、さらに防衛産業の育成に向けて防衛整備品の輸出を国主導で促進する必要性にも言及した。与党は防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」を見直すことで一致しており、日本の防衛産業の国際競争力を引き上げることも期待される。
北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返し、中国は台湾統一に向けて武力行使も辞さない強硬姿勢を崩さない。ただ中国は米中および日中の11月の首脳会談で対話を継続することで一致し、緊張緩和に向けて一歩前進した。中国とは「対立」と「協力」のバランスを保つことで、安全保障を確保していきたい。
(2022/11/24 05:00)