産業春秋／今年の冬はタートルネック

ある日の東京都庁。タートルネック姿の幹部職員がやたらと目に留まる。さほど冷え込んだわけでもないのになぜ―。謎は数時間後に解けた

小池百合子知事が、冬の節電につなげるため都職員にタートルネックやセーターでの執務を推奨すると表明した。暖房を抑えつつ、快適性を保つ工夫である

政府は全国の家庭や企業に１２月１日から２０２３年３月３１日まで節電協力を呼びかける。電力予備率は最低水準を確保するものの、想定以上に需要が増えるリスクや海外からの液化天然ガス（ＬＮＧ）の供給が滞る事態に備える。冬の節電要請は７年ぶりとなる

気候変動やエネルギーといった地球規模の課題を、ライフスタイルに結びつけ意識改革を促す政策手法は小池氏の真骨頂。「大義」を得て「共感」につなげるもので、今回の提案も「おしゃれを楽しむぐらいの余裕を持ちつつ、厳しいエネルギー事情に対する意識を皆さんと共有したい」と話す

こうしたメッセージを同調圧力と受け止め、単に右へ倣えでは意味がない。それぞれが自身の価値観に応じて、当たり前を見直し行動変容につなげる。自立した個を確立した先に、イノベーションの芽も宿るのではないか。