(2022/11/30 05:00)
金融庁が四半期開示の任意化に向けた議論に乗り出した。導入当初から企業の短期志向を助長すると懸念され、近年では関西経済連合会を中心に産業界で見直し論が強まっていただけに今回の金融庁の決断は極めて妥当である。日本企業の長期的経営を取り戻す好機としたい。
岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の一つである四半期開示の見直しについて、金融庁は迅速かつ適切な対応を進めてきた。第1弾として、四半期報告書と四半期決算短信を一本化することを決定。加えて今回、決算短信開示を将来的に任意とする考えを示した。近年、企業より株主優遇とみられていた金融行政にあって、大きな方向転換と言えよう。
四半期開示制度は、小泉純一郎政権下における「証券市場の構造改革プログラム」で直接金融を重視したシステムへの転換を図るという大義名分の下、個人投資を促進する一環として導入された。いわば産業金融のあり方を銀行から投資家に転換することを目指し、投資家を保護する意図があった。世界の潮流たる「米国流」を受け入れるという背景もあったと言われる。
2003年に上場企業に義務付けられた四半期決算ながら、この間、当初の目的は達成されていない。早稲田大学のスズキ・トモ教授の調べによれば、20年には投資家・株主から企業に資金を供給するエクイティ・ファイナンスは1・9兆円である一方、企業からの株主還元は23兆円に達する。スズキ教授は「株式市場・逆機能の20年」と指摘している。四半期開示の狙いは道半ばと言わざるを得ない。
もう一つの弊害は企業の短期志向が定着したことだ。日本企業の強みの一つが長期的経営。未来を見据え、研究開発や設備投資に多額の資金を投じる経営モデルは鳴りを潜めた。株主第一主義がまん延したこの20年は株主還元ばかりを優先し、将来に向けた投資が少なくなったのはデータからも明らかだ。
四半期開示の任意化はもう一度、日本流経営を取り戻すチャンスである。日本にふさわしい真の資本主義を再構築したい。
(2022/11/30 05:00)
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