(2022/12/1 05:00)
科学的知見と合理性に基づく安全対策を前提として、日本が原子力発電所事故のトラウマを克服することを望む。
経済産業省・資源エネルギー庁は、原子力政策の基本原則の原案に「既設炉の最大限の活用」と「次世代革新炉の開発・建設」を明記した。年内にも政府方針として決める。既存の原子力発電所の再稼働・運転期間延長だけでなく、これまで避けてきた新増設にまで踏み込んだことは、エネルギー政策の大転換といえる。
産業界では、以前から経団連が新増設を求めるなど政府に政策転換を促してきた。いまだ国民の一部には東日本大震災による原発事故の恐怖が残っているが、一方で原発の必要性や脱炭素への貢献などの理解も深まっている。新たな議論を始める好機と言うべきだろう。
長く続いた安倍晋三政権が、一貫して原発問題を避けてきたことは残念だった。それでも震災後に複数の原発が再稼働し、産業社会に欠かせない電力を安全に供給する実績を積んだ。
岸田文雄首相がリーダーシップを発揮し、現実を直視したエネルギー政策を展開することは地球環境問題に取り組む上で必要な措置である。また産業界の利益にもかなう。
ウクライナ戦争に伴う世界的なエネルギー不足を補うには原発しかないのが実情だ。休止中の原発が数多くある日本の現状は、そうした設備を持たない国に比べて有利とも言える。
とはいえ古い原発を改修しながら運転延長するにも限度がある。新設計の原発に順次、置き換えていくことが合理的であり、原子力安全の王道だ。政府がようやく新増設の議論を始めることを評価したい。
すべての前提は、古い“安全神話”から脱却することである。「絶対に安全でなければ原発を動かしてはならない」という狭量な一部の意見が、無意味な神話を生んだ。事故を起こさない努力と、放射性廃棄物処理など未解決の問題に継続して取り組むことで、産業社会は原子力と共存し、その利益を享受していかねばならない。
(2022/12/1 05:00)
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